雨の放課後
―ザーザー…
ちょうど授業が終わるタイミングで降り出した雨は、夕方になっても止むことなく降り続いていた。そんな中、玄関で佇む女子が一人…
彩「あ~…今日雨降るなんて言ってなかっただろぉ、良純~…」
彼女は良純の予報を過信しすぎて傘を持ってきていなかった。
彩「う~…えぇい!無防備に置いてあるビニール傘をいただくかな!そいっ!」
「おやぁ?彩ちゃんじゃないか~!それは私の傘だぞ~」
彩「(ビクッ!)あ、あきちゃん!いや、あのぉ~これはですね…」
傘立てから傘を引き抜いた直後に声をかけたのは、クラスメイトのあきだった。
あき「おうおう、私の傘をどうするつもりだい?ん?」
彩「いやぁ…ハハハ」
あき「彩ちゃんは自転車だろ~?傘さして帰れるのかなぁ~?(ニヤニヤ」
彩「うっ…な、無いよりマシかなあなんて…」
あき「ん~?彩ちゃんが傘さして自転車乗るの苦手なことを知らないとでも?ウフフ」
彩「…ええ!そうですよ!片手で傘持ちながら運転できるかってんです!」
あき「まぁまぁ、そうムキにならなくても…」
あき「そんな彩ちゃんに私からこれを差し上げよう!ほいっ!」(ガサッ
彩「ん…レインコート?」
あき「うむ。それを着て帰るがよい、私は歩いて帰るからね~ほんじゃ!」
彩にレインコートを押し付けてあきは帰っていった。
つづく
ちょうど授業が終わるタイミングで降り出した雨は、夕方になっても止むことなく降り続いていた。そんな中、玄関で佇む女子が一人…
彩「あ~…今日雨降るなんて言ってなかっただろぉ、良純~…」
彼女は良純の予報を過信しすぎて傘を持ってきていなかった。
彩「う~…えぇい!無防備に置いてあるビニール傘をいただくかな!そいっ!」
「おやぁ?彩ちゃんじゃないか~!それは私の傘だぞ~」
彩「(ビクッ!)あ、あきちゃん!いや、あのぉ~これはですね…」
傘立てから傘を引き抜いた直後に声をかけたのは、クラスメイトのあきだった。
あき「おうおう、私の傘をどうするつもりだい?ん?」
彩「いやぁ…ハハハ」
あき「彩ちゃんは自転車だろ~?傘さして帰れるのかなぁ~?(ニヤニヤ」
彩「うっ…な、無いよりマシかなあなんて…」
あき「ん~?彩ちゃんが傘さして自転車乗るの苦手なことを知らないとでも?ウフフ」
彩「…ええ!そうですよ!片手で傘持ちながら運転できるかってんです!」
あき「まぁまぁ、そうムキにならなくても…」
あき「そんな彩ちゃんに私からこれを差し上げよう!ほいっ!」(ガサッ
彩「ん…レインコート?」
あき「うむ。それを着て帰るがよい、私は歩いて帰るからね~ほんじゃ!」
彩にレインコートを押し付けてあきは帰っていった。
つづく
彩「…あっさり帰ってしまわれた。」
あきから渡されたレインコートを持って、彩はボーッとしていた。ただ、いつまで居ても埒があかないので、ようやく帰る決心をした。
駐輪場まで行くのにも傘が無いので、玄関でレインコートを着ようとした彩は、レインコートを広げると険しい表情に変わった。
彩「…大きいな、これ…」
あきの身長は160後半でかなり大きい方だったのに対し、彩は150cmに届くか届かないかだったので、当然レインコートのサイズも違ってしまっていた。
彩「まぁ、着てみれば関係ないよね!…んしょ」(ガサガサ
リュックの上からレインコートを着ても、前のボタンはキッチリしまった。スカート部分のファスナーを上げると、彩はぼやいた。
彩「…あきちゃん、貴女のレインコートは長いですね、ハハ…」
裾が完全に地面について引きずっていたので、しょうがなく太ももの辺りをたくしあげて彩は駐輪場まで走った。
彩(こんな格好見られたくないなあ~!)
ちょっと小柄な女子高生、彩。彼女は今、ぶかぶかのレインコートを裾を引きずらないようにたくしあげながら、走っている。
本降りの雨に打たれること数十秒、駐輪場に着いた彩は、ふぅ~と息を吐いた。
彩「あきちゃんのレインコート…大丈夫かな、これ」
あきから借りた(半ば押し付けられた)紺色のレインコートは、はっ水効果が落ちているようで、所々ピカピカと光ってるように見えた。
彩「まぁいいか、どうしようもないし」
自転車の鍵を開けて、さあ帰るかというタイミングで、彩はまた呼び止められた。
カナ「お~、彩じゃん!どしたの?その格好。」
彩の目の前には透明レインコートを着たクラスメイトのカナがいた。
彩「(見られちまった…)あ~実は、かくかくしかじか…」
カナ「ふ~ん…あきちゃんのレインコートねぇ~(可愛いじゃないか!あきちゃんGJ)」
彩の足元まですっぽり覆われたレインコート姿を、カナはジロジロと眺めていた。そして、おもむろに携帯を取り出した。
パシャッ!
彩「えっ?ちょ!なに写メなんか撮ってるのさ!消せ~!」
カナ「気にするな!減るもんじゃないし!じゃあね~、気をつけて帰るんだぞ~」
あっという間に自転車で走り去ったカナを、彩は呆然と見送った。
彩「写メなんか撮ってど~すんだか…もう、さっさと帰ろ」
カナの行動に疑問を感じながら、彩は雨の中を走り出した。
自転車で走るにつれて、雨が強くなっていた。レインコートには降った雨がそのまま残っているようだった。彩は、信号などで止まる度に腕をバサバサと振って、レインコートの水を飛ばしていた。
さらに、レインコートの中が蒸れてくるようになると、彩は妙なものを感じた。
彩「あきちゃんのレインコート、いい匂いするなぁ」(クンカクンカ
普段とは違う香りを感じていると、いきなり現実に戻された。
彩「うわっと!なんでこんなに風が強いんだよ~…」
家まであと少しというところで、向かい風が強くなり、レインコートにも激しく雨が打ち付けていた。
彩「もぉ~全然進まない~…うっぷ…」
立ち漕ぎで必死に進んでいると、フードの中まで雨が吹き込んできてしまった。
彩「ハハッ…どうしてこうなった…ここまでくるとなんか楽しいわ!」
やっとの思いで家に着き、レインコートを脱ぐ。レインコートからは水が滴り落ちている。
彩「はぁ…結局制服も濡れてるし…でもレインコート無いよりか全然マシだよね、うん」
レインコートを着ていてよかったなぁと思いつつ、レインコートを干しながら、彩は呟いた。
「もう良純の天気予報は見ない」
-おわり
あきから渡されたレインコートを持って、彩はボーッとしていた。ただ、いつまで居ても埒があかないので、ようやく帰る決心をした。
駐輪場まで行くのにも傘が無いので、玄関でレインコートを着ようとした彩は、レインコートを広げると険しい表情に変わった。
彩「…大きいな、これ…」
あきの身長は160後半でかなり大きい方だったのに対し、彩は150cmに届くか届かないかだったので、当然レインコートのサイズも違ってしまっていた。
彩「まぁ、着てみれば関係ないよね!…んしょ」(ガサガサ
リュックの上からレインコートを着ても、前のボタンはキッチリしまった。スカート部分のファスナーを上げると、彩はぼやいた。
彩「…あきちゃん、貴女のレインコートは長いですね、ハハ…」
裾が完全に地面について引きずっていたので、しょうがなく太ももの辺りをたくしあげて彩は駐輪場まで走った。
彩(こんな格好見られたくないなあ~!)
ちょっと小柄な女子高生、彩。彼女は今、ぶかぶかのレインコートを裾を引きずらないようにたくしあげながら、走っている。
本降りの雨に打たれること数十秒、駐輪場に着いた彩は、ふぅ~と息を吐いた。
彩「あきちゃんのレインコート…大丈夫かな、これ」
あきから借りた(半ば押し付けられた)紺色のレインコートは、はっ水効果が落ちているようで、所々ピカピカと光ってるように見えた。
彩「まぁいいか、どうしようもないし」
自転車の鍵を開けて、さあ帰るかというタイミングで、彩はまた呼び止められた。
カナ「お~、彩じゃん!どしたの?その格好。」
彩の目の前には透明レインコートを着たクラスメイトのカナがいた。
彩「(見られちまった…)あ~実は、かくかくしかじか…」
カナ「ふ~ん…あきちゃんのレインコートねぇ~(可愛いじゃないか!あきちゃんGJ)」
彩の足元まですっぽり覆われたレインコート姿を、カナはジロジロと眺めていた。そして、おもむろに携帯を取り出した。
パシャッ!
彩「えっ?ちょ!なに写メなんか撮ってるのさ!消せ~!」
カナ「気にするな!減るもんじゃないし!じゃあね~、気をつけて帰るんだぞ~」
あっという間に自転車で走り去ったカナを、彩は呆然と見送った。
彩「写メなんか撮ってど~すんだか…もう、さっさと帰ろ」
カナの行動に疑問を感じながら、彩は雨の中を走り出した。
自転車で走るにつれて、雨が強くなっていた。レインコートには降った雨がそのまま残っているようだった。彩は、信号などで止まる度に腕をバサバサと振って、レインコートの水を飛ばしていた。
さらに、レインコートの中が蒸れてくるようになると、彩は妙なものを感じた。
彩「あきちゃんのレインコート、いい匂いするなぁ」(クンカクンカ
普段とは違う香りを感じていると、いきなり現実に戻された。
彩「うわっと!なんでこんなに風が強いんだよ~…」
家まであと少しというところで、向かい風が強くなり、レインコートにも激しく雨が打ち付けていた。
彩「もぉ~全然進まない~…うっぷ…」
立ち漕ぎで必死に進んでいると、フードの中まで雨が吹き込んできてしまった。
彩「ハハッ…どうしてこうなった…ここまでくるとなんか楽しいわ!」
やっとの思いで家に着き、レインコートを脱ぐ。レインコートからは水が滴り落ちている。
彩「はぁ…結局制服も濡れてるし…でもレインコート無いよりか全然マシだよね、うん」
レインコートを着ていてよかったなぁと思いつつ、レインコートを干しながら、彩は呟いた。
「もう良純の天気予報は見ない」
-おわり