出会い(前編)
レインコートが大好きな女の子、由佳。雨が降る日はレインコートと長靴が欠かせない。晴れている日でも、由佳は鞄の中にポケットレインコートを忍ばせている。天気予報でにわか雨があるかもしれないという日に由佳が出かけると、大抵予報通りに雨が降るからである。
「もぉ~…しょうがないなぁ」とは言いつつ、由佳はレインコートを着て雨の中を歩いて行くのであった。
「もぉ~…しょうがないなぁ」とは言いつつ、由佳はレインコートを着て雨の中を歩いて行くのであった。
ある日の朝、由佳は出かける前に天気予報をチェックしていた。発達しながら進む低気圧の影響で、昼間は曇り空、夕方から夜にかけて雨が降り出し、風も強まり荒れた天気になるとのことだった。お天気お姉さんの「レインコートがあると安心です」のコメントを見た由佳は、「言われなくてもわかってま~す」と思いながら家を出る準備を続けた。
服を着替え荷物をまとめて、由佳は玄関へ向かい、並べてあるレインブーツの中から今日は黄色のものに足を入れた。レインブーツも好きな彼女の家の玄関には、ジョッキータイプの黒と茶色、エナメルでヒールがついた白と黒、それにラバー製の黄色と水色のレインブーツがズラリと並んでいる。
「行ってきまあす」パーカーに膝丈のスカート、黄色のレインブーツを履いて由佳は家を出た。
大学での午後の講義中、由佳は落ち着かなかった。窓の外を見ると、雨が降り出しており風も木がざわざわと音を立てるほど吹いている。時折、傘を差す女の子たちの悲鳴も聴こえてきた。 (あ~早く外に出たい…)終了の鐘が鳴ると荷物をまとめ、足早に教室を出た。
雨は本降りで風に乗って斜めに降っている光景を前に、由佳は鞄からポケットレインコートを取り出し、慣れた手つきで袖を通しボタンをとめる。「よ~し、行きますか!」傘を開き、歩いて自宅まで15分。と思っていたところ、不意に名前を呼ばれた。
「由佳~?やっぱりそうだ~!」声の主は美波。由佳と同じ大学一年で同じサークルに入っている。名前は知っていたものの、あまり話したことはなかった。
「今から帰りかな?おぉ!カッパに長靴で完全防備だねぇ」
「…うん、まあね。じゃあ帰るから」由佳は少し邪魔された気分でムスッとしながら答えた。
「ちょちょちょっと待って、帰る方向一緒じゃんよ!一緒に帰ろ♪」引き留める美波にめんどくさいなあと思いつつ付き合う由佳。
「そうだっけ?美波いつも自転車じゃん」
「裏門の方まで一緒じゃん。そっちの駐輪場に自転車止めてるからさ♪」
「じゃあ早く行こっか、雨強くなってきてるし…」
話している間に雨は土砂降りになっていた。駐輪場まで歩くうちに由佳のレインコートは雨粒が多くついて、着てきて正解と思わせる状態だった。
駐輪場に着いた二人。思わぬ邪魔が入ってしまったものの、これでやっとレインコートを楽しみながら帰れるし、おまけに土砂降りになったのは結果オーライだねと由佳は思いながら、「じゃあまたね!気をつけてね」と、美波に告げた。
「由佳も気をつけて!バイバイ!」
美波は(なんか機嫌悪くなるようなことしたかな~…)と思いつつ、鞄から通学用のレインコートを取り出し、ガサガサと広げた。「この土砂降りだから着てても濡れちゃいそうだなぁ…」と、ボタンを上までとめたところでふと隣に由佳がいることに気づいた。「うわっビックリしたあ!」と驚く美波。
由佳は帰ろうとしたものの、ガサガサと通学用レインコートを着ている美波に気づき戻って来ていた。
「…レインコート着るんだ」青のレインコートに包まれた美波に由佳はつぶやいた。
「うん。…おかしいかな?」「いやっ!全然!?おかしくないよっむしろ嬉しい!」「えっなにそれ~どういうこと~?」「な、なんでもないよ!気にしないで!」
思わずレインコートフェチの心が出てしまい、あたふたする由佳を笑いながら美波はレインコートのフードを被り、口元のボタンを止めた。
「あ、あたしは三丁目の公園の近所なんだけど美波の家は?」
「ん?あたしもその辺だよ!ご近所さんだったんだね」「そ、そうなんだ!じゃあ一緒に帰ろっ…か」思わず言葉が詰まりかけた由佳、その訳は目の前でレインコートのベルトまで締めている美波がいたからだ。どうしてそこまで…と思いながら見つめていると、美波は笑いながら答えた。「あたしレインコートのこの感触好きなんだよね~!風も強いししっかり着ないとね」
美波もまたレインコートが大好きな女の子だったのである。
レインコートフェチの女の子がいたことに驚いた由佳は、どうしようかとそのまま立ち尽くしていたが、「酷くならないうちに帰ろっ?」と自転車を押しながら言う美波に「あっあぁ、そうだね」と慌ててついていった。
続く
服を着替え荷物をまとめて、由佳は玄関へ向かい、並べてあるレインブーツの中から今日は黄色のものに足を入れた。レインブーツも好きな彼女の家の玄関には、ジョッキータイプの黒と茶色、エナメルでヒールがついた白と黒、それにラバー製の黄色と水色のレインブーツがズラリと並んでいる。
「行ってきまあす」パーカーに膝丈のスカート、黄色のレインブーツを履いて由佳は家を出た。
大学での午後の講義中、由佳は落ち着かなかった。窓の外を見ると、雨が降り出しており風も木がざわざわと音を立てるほど吹いている。時折、傘を差す女の子たちの悲鳴も聴こえてきた。 (あ~早く外に出たい…)終了の鐘が鳴ると荷物をまとめ、足早に教室を出た。
雨は本降りで風に乗って斜めに降っている光景を前に、由佳は鞄からポケットレインコートを取り出し、慣れた手つきで袖を通しボタンをとめる。「よ~し、行きますか!」傘を開き、歩いて自宅まで15分。と思っていたところ、不意に名前を呼ばれた。
「由佳~?やっぱりそうだ~!」声の主は美波。由佳と同じ大学一年で同じサークルに入っている。名前は知っていたものの、あまり話したことはなかった。
「今から帰りかな?おぉ!カッパに長靴で完全防備だねぇ」
「…うん、まあね。じゃあ帰るから」由佳は少し邪魔された気分でムスッとしながら答えた。
「ちょちょちょっと待って、帰る方向一緒じゃんよ!一緒に帰ろ♪」引き留める美波にめんどくさいなあと思いつつ付き合う由佳。
「そうだっけ?美波いつも自転車じゃん」
「裏門の方まで一緒じゃん。そっちの駐輪場に自転車止めてるからさ♪」
「じゃあ早く行こっか、雨強くなってきてるし…」
話している間に雨は土砂降りになっていた。駐輪場まで歩くうちに由佳のレインコートは雨粒が多くついて、着てきて正解と思わせる状態だった。
駐輪場に着いた二人。思わぬ邪魔が入ってしまったものの、これでやっとレインコートを楽しみながら帰れるし、おまけに土砂降りになったのは結果オーライだねと由佳は思いながら、「じゃあまたね!気をつけてね」と、美波に告げた。
「由佳も気をつけて!バイバイ!」
美波は(なんか機嫌悪くなるようなことしたかな~…)と思いつつ、鞄から通学用のレインコートを取り出し、ガサガサと広げた。「この土砂降りだから着てても濡れちゃいそうだなぁ…」と、ボタンを上までとめたところでふと隣に由佳がいることに気づいた。「うわっビックリしたあ!」と驚く美波。
由佳は帰ろうとしたものの、ガサガサと通学用レインコートを着ている美波に気づき戻って来ていた。
「…レインコート着るんだ」青のレインコートに包まれた美波に由佳はつぶやいた。
「うん。…おかしいかな?」「いやっ!全然!?おかしくないよっむしろ嬉しい!」「えっなにそれ~どういうこと~?」「な、なんでもないよ!気にしないで!」
思わずレインコートフェチの心が出てしまい、あたふたする由佳を笑いながら美波はレインコートのフードを被り、口元のボタンを止めた。
「あ、あたしは三丁目の公園の近所なんだけど美波の家は?」
「ん?あたしもその辺だよ!ご近所さんだったんだね」「そ、そうなんだ!じゃあ一緒に帰ろっ…か」思わず言葉が詰まりかけた由佳、その訳は目の前でレインコートのベルトまで締めている美波がいたからだ。どうしてそこまで…と思いながら見つめていると、美波は笑いながら答えた。「あたしレインコートのこの感触好きなんだよね~!風も強いししっかり着ないとね」
美波もまたレインコートが大好きな女の子だったのである。
レインコートフェチの女の子がいたことに驚いた由佳は、どうしようかとそのまま立ち尽くしていたが、「酷くならないうちに帰ろっ?」と自転車を押しながら言う美波に「あっあぁ、そうだね」と慌ててついていった。
続く